気がついたら
破けや、色褪せに惹かれていて
自分が纏うモノも自然と
「何年着てるんだよそれ」って突っ込まれるような
買ったばかりのボロに囲まれるようになっていった。
まるで可愛い女でも眺めるかのように
経年の変化を魅せる美しい素材にうっとりする感覚は
僕のような人種にとって、豊かさのひとつとも言える。
ただ、年齢を重ねていくにつれ
TPOに合わせた装いも大事になってくることも事実であり
ボロ好きも、その事実から逃れられず
結局ボロは部屋の片隅に追いやってしまう
なんてひとも、たくさんいることだろう。
そういう話を聞くたびに
なんだか切ない気持ちになっていた。
死ぬまで少年の気持ち。
とまでは言わないが
美しいモノを美しいと捉える感覚は
素晴らしいことであり
それは決して、社会に汚染されるべきものではなく
個人の心に宿るものであるから。
ある特定のひとにわかれば良いという
独りよがりの考えではなく
だれもがもっていたはずの忘れかけた美への感覚を
ボロを通し想いだし、心がなんだかあったかくなるような。
そんな意思が共有できることを願って
日々、古生地を縫っています。